東京都の新型コロナの公開データがおかしい?退院者が3週間も増えなかった理由

こんにちは、東京都議会議員の藤井あきらです。

最近東京都の公開しているデータについて、疑問の声をいただくことが増えました。

「東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトで公開しているデータがどうにもおかしい」

「東京都の陽性率が高すぎる。調査数が少なすぎるのではないか?」

「退院者は53人しかいないの?」

こんな話を頻繁に聞くようになり、色々と調べていました。

PCR検査の数については、以下のブログでまとめています。

目次

53人⇒297人に急増する退院者は、データ的には明らかに異常値です

そんな中、4月19日に退院者の数が、53人から297人に急増をしました。

率直に言って、驚きました。

退院患者の数は、それまで3週間ほど53人でしたので、突然297人に増えるのは、明らかにデータとして異常です。ありえない事態です。

「東京都は何かデータを操作しているのではないか」と疑う人が出てきてもおかしくありません。

そういった誤解を与えて信頼を失えば、今後の政策・施策の効果にも悪い影響が出てくる可能性があります。

そういった疑念は、すぐに払拭するように情報を発信をするべきです。

原因は、激務の中、保健所から都への報告が届かなくなっていること

退院者数は、各保健所から東京都に報告がされるものになっています。

しかし、コロナ相談や陽性者数が急増する中で保健所の業務も激増し、保健所から都へ退院者の報告が上げることができなくなっていました。

以下の記事などを見ても、急増する陽性患者により、保健所の業務が回らなくなっています。

●追い込まれる保健所「未経験の忙しさ」「過労死ライン超える」…新型コロナ最前線( 毎日新聞2020年4月19日 18時53分(最終更新 4月19日 23時10分) )

そのため、都側でも退院者数を把握ができず、公表している退院者数は53人のままでした。

都もおかしいと考えたのか、本来の保健所ではなく都側から直接病院に連絡をして確認をしたそうです。

その結果、退院者は297人と確認され、対策サイトにも反映されました。

保健所で情報が止まってしまい、都側でも退院者数のデータを把握できていなかったことが問題でした

では、なぜそのようなことが起きるのか?

<追記>21日16時40分
退院者の数が、さらに600人に増えていました。
都の確認が進んでいるという点ではポジティブに評価できますが、すべて把握できているのかどうか心配になります。

保健所の設置主体は23区においては区が設置主体

そこで、PCR検査のフローの確認と、陽性者の報告、ステータスの管理をどのように行っているのか整理をしました。

まず、新型コロナウイルスの陽性者の管理は保健所が行います

保健所の設置主体を確認すると、都の権限が直接及ぶのは、多摩・島しょにある6つの直轄の保健所のみです。

特に患者の多い23区の保健所は、設置主体がそれぞれの23区です。

つまり、23区内の保健所については、管理等の権限がそれぞれの区にあり、東京都はあくまで支援する立場です。

陽性者が判明すると、各保健所から東京都に対して報告され、都では病床のマッチングを行います。

ここにボトルネックがあります。

23区の保健所についてはそれぞれの区が主体で、都は支援・サポートする立場なのです。

危機において「お見合い」になってお互いが動けなくなっているのではないかと懸念をしています。

これは想像ですが、データ管理の方法、運用などもそれぞれの保健所によってルールが違うのではないでしょうか?

本来は、今の技術を使えば、リアルタイムに情報を反映させることも、そんなに大変なことではないはずです。

患者と病床のマッチングに時間がかかっているという問題も聞こえてくるところなので、そこは また別途考察してみたいですが、課題は本論と同じ気がします)

優れたデータ公開も一歩扱いを間違えれば信頼を失ってしまう危険性がある

東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトは、その見やすさ、わかりやすさから大変好評を得ていますが、裏側のデータについては以前より課題意識を持っていました。

データを公開することは、都民との信頼関係を築く上で非常に重要です。

しかし、誤ったデータを出したり、何かを誤魔化しているのではないかと疑われてしまっては本末転倒です。

第一段階を過ぎて、データの出し方を正確に、わかりやすくするための精査する段階に来ていると思います。

まずは保健所の業務フローを見直して、保健所でしかできない事と外部に任せることができることを精査し、外注すべきはすることが求められています。

アイスランドでは、コロナ感染者の追跡を警察が行っているという例もあるようです。
日本では難しいのかもしれませんが、新型コロナと言う国難を前にしては、それくらいドラスティックに考えてもいいはずです。

●A Cop Skilled in Tracking Mobsters Is Now Focused on the Coronavirus (The Wall Street Journal, April 9, 2020 5:30 am ET)

そして、システム化・自動化による業務の効率化、迅速化、リアルタイム化が重要です。

先日のブログでは、船橋市の保健所の事例を紹介しましたが、厚生労働省でもセールスフォース・ドットコムを活用して、都道府県や民間検査機関との情報連携の迅速化する事例が出てきています。

今後、リアルタイム性が求められる民間検査機関でのPCR検査状況、受け入れ状況の確認を迅速化するとのことです。

●セールスフォース・ドットコム、 厚生労働省主導の民間検査機関でのPCR検査状況等に関する 「新型コロナウイルス情報連携基盤」を構築支援(株式会社セールスフォース・ドットコム 、2020年4月9日(4/17訂正済み))

また、これらは約1週間で基本となる情報連携基盤を開発したとのことで、東京都もこれから導入しても遅くありません。

都は、今後、システム化を含めて保健所業務の効率化を検討していくべきです。

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